奥深い温泉の魅力にはまる 岐阜の隠れ湯【湯屋温泉 / 神明温泉】
今回は、奥深い温泉の魅力にはまる、岐阜隠れ湯の旅をつづります。
こんなに個性的な温泉が湧いているなんて・・・。
そっとしておきたいような、語りたいような、魅力あふれる岐阜の隠れ湯をご紹介します。
シュワシュワと泡が弾ける湯屋温泉
岐阜県の中ほど、JR飛騨小坂駅から車で10分ほどの場所に湯屋温泉があります。
宿へ行く前に飲泉所を見かけて立ち寄ってみると、薬師如来、日光菩薩、月光菩薩が見守る湯口から勢いよく源泉が出ています。
湯が落ちたところからは、シュワシュワと弾ける泡。
これはスゴイと、期待が高まります。
温泉を手にとって飲んでみると、ミネラル分が出汁のような味わい、口の中でピリリと炭酸味を感じます。
宿泊したのは「泉岳館」。
和モダンのお部屋は、こたつでほっこり、眠るのはベッドといういいとこどりの和洋折衷。
館内にも温泉が飲める「飲泉場」があります。
宿の自家源泉で、湯屋温泉の共同飲泉所よりもマイルドな味わいです。
飲みやすい微炭酸で、冷たくて美味しい。
独自の工夫で炭酸泉の個性を生かす
岐阜県随一の高濃度天然炭酸泉が湧く湯屋温泉は、単純二酸化炭素冷鉱泉。
二酸化炭素ガスを1203.1mg/kg含有しています。
㏗5.7の弱酸性、源泉温度は12度と冷たく、露天風呂は加温した熱い温泉を入れていますのでほかほかと気持ちよく入れます。
内湯では、できる限り炭酸泉の魅力を入浴でも感じていただきたいと独自の熱交換システムで、炭酸ガスがなるべく逃げないように工夫をしています。
2つの湯船の右側は加温した温かい温泉、左側は熱交換した源泉を湯船の中からそっと注ぎ込み、ぬるめの心地よい温度ですが、静かに浸かっていると微炭酸の泡を感じて、じわじわと血の巡りがよくなり、ぽかぽかと温まります。
食べてもオイシイ炭酸温泉の料理
飲むことができる温泉は、料理にも登場します。
夕食は炭酸泉の温泉しゃぶしゃぶ。
飛騨牛とイワナをどちらも源泉で調理すると、素材の旨みが引き出されて、ふわっとやわらかな食感になります。
朝食では、源泉粥と源泉湯豆腐。透明な炭酸泉に豆腐を入れて火にかけると、魔法のように豆腐がとろとろにとろけていきます。
とろとろの感触と魅惑のぬる湯「神明温泉」
次なる隠れ湯は、奥美濃・関市板取の秘湯・神明温泉の「湯元すぎ嶋」です。どっしりとした門をくぐって古民家の宿へ。
地下30メートルから自噴する自家源泉
源泉かけ流しの檜風呂や貸切露天風呂など8つの湯船で温泉が楽しめます。
大浴場の檜風呂はこだわりの造り。
2つの湯船では、37度の源泉をそのままかけ流しにした「ぬる湯」と加温かけ流しの「あつ湯」をそれぞれ楽しめるのです。
pH8.88のアルカリ性単純温泉、とろとろつるりとした心地よい感触に包まれる温泉です。
あつ湯で体を温めたら、37度の源泉をそのままかけ流しにしているぬる湯へどぼん。
ほてった体をクールダウン、しばらくじっとしていると、どこまでが自分の体か、どこからがお湯なのか、境目がわからなくなって温泉と同化してしまうような浮遊感、
体も心もすっと軽くなって脱力できる魅惑の湯です。
森をわたる風と山々の風景に癒される露天風呂でもとろとろ温泉を満喫。
古民家を移築した湯上り処もすてきです。
どっしりとした梁が印象的な空間で、裏山の湧水をいただいてのんびり休息。
薪ストーブもあって寛げます。
竹林の小路を歩いて貸切露天風呂へ
宿泊者専用の貸切露天風呂へは敷地の竹林の小路を歩いて行きます。
隠れ湯を探すような気分で進むとほんのり灯りが見えてきます。
点在する湯小屋のひとつへ入ると、森の中の野天湯のような雰囲気、つるつるとした温泉をひとり占めできる贅沢な温泉です。
古民家の空間で囲炉裏で食事
食事処は囲炉裏があり、炭火焼をしながら食事を楽しみます。
地酒は竹筒に入って旅情たっぷり。
みょうが寿司、川海老素揚げ、うるいの酢味噌がけ、こごみ胡麻和え、わさびの醤油漬け、鱒のきぬたなどの前菜を地酒と一緒に味わいます。
名物 岩魚の唐揚げは、骨までカラッと揚がって美味。
囲炉裏で炭火焼きするお料理がとても美味しい。
清流の鮎は串に刺してじっくり焼いてかぶりつく、分厚い肉や野菜もワイルドに焼いてぱくり。山菜やキノコなど山の味覚もたっぷり味わえるごちそうと温泉で体中の細胞が元気になったように感じられました。
岐阜には、訪れてみたい隠れた名湯がたくさんあると、しみじみ思った旅でした。
- 旅人・石井宏子さん
- 旅行作家・温泉ビューティ研究家。日本・世界の温泉を旅して取材執筆、テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究。ごほうび温泉宿から秘湯の宿まで、いい湯を求めて一年の半分を温泉旅で過ごしています。