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山の力を温泉でチャージする【奥飛騨温泉郷】

北アルプスの山々に育まれた奥飛騨温泉郷は、全国屈指の湧出量を誇り、平湯、新穂高、福地、新平湯、栃尾と趣の異なる5つの温泉地があります。

存分に温泉を満喫しようと2泊3日で温泉めぐり。体にも心にも山のエネルギーを補給する温泉楽園の旅です。
山の力を温泉でチャージする【奥飛騨温泉郷】

三千メートル級の山々を眺める絶景温泉

新穂高温泉「槍見舘」に泊まる醍醐味のひとつは、ちょこんと尖った槍ヶ岳、大喰岳、中岳と、北アルプスの山々を眺める絶景露天風呂「槍見の湯」。

深めの岩風呂にたっぷりと注がれる源泉かけ流しの温泉は、山々の恵みの水にぎゅっと抱かれるような力強さがあります。専用の湯あみ着で和気あいあいと混浴を楽しむご夫婦も。朝は女性専用時間もあります。

貸切風呂で温泉をひとり占め

槍見舘の敷地内には10か所の温泉があります。宿泊者は自由に入れる4つの貸切温泉で、温泉をひとり占めするのは贅沢の極み。「渓流の湯」は湯の流れる音が清々しくて、ずっと入っていたい心地よさです。

泉質は単純温泉、pH6.6の中性。清らかな水と地球のエネルギーがもたらす温泉の恵みに癒されます。

「幡隆の湯」は隠れ湯の雰囲気、湯の中に腰かけて月見で一杯をイメージして作ったそうです。

山の湯宿のおもてなし

ロビーには山の清水で冷やされたビールや飛騨牛乳、源泉かけ流しの温泉たまご。好きなものを楽しんで自己申告制で精算する、なんともほっこりした湯宿流のおもてなしです。

和モダンに改装された部屋にも囲炉裏の名残りの小あがり。小鳥がすぐそばの枝まで飛んできました。炭火でじっくりと焼かれる岩魚の香りに誘われて、夕食に思いを馳せます。

飛騨の食文化を美味しく味わう夕食

あけびの皮の味噌炒め、水玉草、姫竹、山桃など山の恵みや寒干し大根、こも豆腐と奥飛騨の寒風で美味しくなった冬のごちそうの前菜、選べるお造りは川魚か肉三種。飛騨牛、飛騨ポーク、飛騨かしわを、料理長特製のピリ辛たれで味わう印象的な一品。

飛騨牛はフレッシュなめこと一緒にすき焼きで。ごはんのお供は飛騨名物・漬物ステーキ。

福地温泉の朝市は昭和レトロ

中尾白山神社で氏神様や水の神様、山の神様に感謝のご挨拶。例年であれば冬の夜は中尾かまくらまつりで灯りがともります。

福地温泉へ移動して朝市へ。昭和レトロな店内で念願の飛騨山椒を発見。奥飛騨を旅すると必ず買って帰る逸品です。

ほっこりオーガニックな古民家カフェ

古民家カフェ木花木花(もっかもっか)でランチ。「飛騨プレミアムワンプレート」は飛騨粒山椒をミルで挽いてつくる飛騨山椒ポークと飛騨サーモンのフレッシュハーブグリルが味わえるいいとこどり。化学調味料不使用で手作りする優しい味わいにほっこり。2泊の旅はスローな時間も楽しみです。冬みかんで作る「しっとり密柑パンドケーキ」とハンドドリップコーヒーでしみじみとした昼下がり。

豊富な自家源泉が生み出す魅惑のにごり湯

福地温泉「元湯 孫九郎」は、4本の自家源泉を持ち、温度の異なる源泉をブレンドすることで100%ピュア源泉かけ流しと心地よい温度を実現しています。

その日のブレンドの加減により緑褐色のにごり湯へと変化する露天風呂「蒼の湯」は2019年にリニューアルし、屋根付きの露天と、ほっこり癒される「なか風呂」ができました。

「あ~~。」じんじんじわじわと全身に染み込むような温泉パワー。

同じ源泉を注いでいるのに湯船によって温泉の色や感触が微妙に違っておもしろい。単純温泉でもこんなに個性があるのかと天然の恵みの神秘を感じます。

古民家の暮らしとモダンが融合

玄関を入ると飛騨古民家の暮らしを感じる囲炉裏。

でも、奥へ進むと飛騨家具のモダンなラウンジ、畳リビングにベッドの部屋には、茶香炉が炊かれていい香りです。

さりげなく飛騨高山の真工藝の木版手染めぬいぐるみが迎えてくれました。

温泉の後は飛騨家具の「音泉リビング」

湯上がりに驚きの空間をみつけました。

柏木工の飛騨家具に腰かけて音の泉に浸れる「音泉リビングParagon」。パラゴンとは木製スピーカーの名前です。腰かけてやわらかな音に包まれます。

「女に効く」温泉で肌も髪もつやピカ

露天風呂とは別の自家源泉に入れる大浴場の「大湯」。ここで、さらなる温泉の魅力に出会うことに。泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉、肌の古い角質を落としてすべすべに整える美肌の湯です。無色透明ですが大地のミネラルがたっぷり溶け込み、とろりとなめらかな湯にぎゅっと抱かれているような重厚感。奥がぬる湯で手前が熱めの湯、この行ったり来たりが、たまらなく気持ちよくて無限ループに陥りそうです。

温泉で髪も洗い、顔も洗い、飲むこともできるので内臓も活性化。全身丸ごと引き受けてくれる温泉です。

土地の温もりを感じる飛騨尽くしの食事

寅年の芳男じいさん手作りの梅酒、福地のこごみのごま和え、大女将が育てた大根を雪の畑から掘り出した大根カニあんは、旨みと甘みが秀逸。飛騨陣屋とうふのグラタン、自家製あぶらえ(エゴマ)みその手作り五平餅など、地酒をちびちびいただきながら味わう。

メインは飲める源泉を使った「飛騨牛の温泉しゃぶしゃぶ」。とろける肉の旨みがたまりません。

旅人・石井宏子さん
旅行作家・温泉ビューティ研究家。日本・世界の温泉を旅して取材執筆、テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究。ごほうび温泉宿から秘湯の宿まで、いい湯を求めて一年の半分を温泉旅で過ごしています。