岐阜県の最南端!海津市で水の歴史にふれる旅
- 透 千保
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心地よい風が吹くと川面にさざ波が立って、陽の光がキラキラと反射します。
私たちがこの穏やかな景色を楽しめるのは、先人達のお陰と言っても過言ではありません。
今回は、水との闘いをへて水との調和をめざす岐阜県海津市をご紹介します。
千本松原と治水神社
木曽川・長良川・揖斐川という三つの河川、木曽三川の下流域には、千本松原と呼ばれる松並木があり、そこには治水神社という全国的にも珍しい治水の神社があります。
宝暦3年(1753年)、江戸幕府は水害に苦しむこの地域の住民を守るため、薩摩藩にお手伝普請として治水工事を命じました。
薩摩藩は多くの犠牲者を出しながらも、三川の分流工事を見事に完成させました。
完成した堤防には藩士らの故郷、薩摩から取り寄せた松が植えられ300年近く経つ今も、その姿を残しています。
治水神社では、工事の監督を務め、工事の完成を見届けた後に亡くなった薩摩藩家老 平田靱負(ひらた ゆきえ)を御祭神として祀り、毎年春と秋には、治水工事に尽力した薩摩義士らの遺徳を偲び例大祭が行われ、鹿児島県をはじめ他県からも多くの方が参拝に訪れます。
4月25日に行われる春の例大祭では、地元の自治会や児童たちがこの日のために作ったお神輿を担ぎ、次々とお神輿を奉納します。
最後に長良川で禊ぎ(みそぎ)をした舟神輿(ふなみこし)が奉納されます。
例大祭の主役は、平田靱負の没年である52歳の男性が「心男(しんおとこ)」として選ばれ、侍姿の平田靱負に扮して神輿行列を先導します。
普段は静寂に包まれた境内にいくつものお神輿が入り、お祭りもヒートアップ!
締めくくりには、海津市立大江小学校の児童による創作狂言「失せうろこ」が上演されました。
千本松原で失ったうろこを捜す龍の子が、川の汚れを悲しむ松の精霊たちに出会い、川を大切にする心を持つという物語です。
児童たちはお神輿を担いだり狂言を演じることで、先人への感謝や郷土の歴史・文化を学び、木曽三川の環境保全などを考えていきます。
薩摩義士への感謝の気持ちは、こうして子ども達に受け継がれているのですね。
10月25日には、神社境内の一角にある観音堂で法要が行われます。
海津市歴史民俗資料館
宝暦治水についてさらに知りたい方には、海津市歴史民俗資料館がおススメ!
こちらでは、輪中の暮らしや文化、高須藩松平家の歴史などを学ぶことができます。
高須輪中変遷劇場は、4600分の1のスケールの大型模型が動き、高須輪中の今昔を見ることができます。
川の流れを変えるために、大工事が行われたのですね。
美濃高須藩 松平家は、御三家 尾張藩 徳川家の分家(支藩)にあたり、幕末から明治維新にかけて大きな役割を担いました。
高名な高須四兄弟も、美濃高須藩 松平家の出身です。
尾張藩主:徳川慶勝(よしかつ)、徳川茂徳(もちなが)、のちの一橋茂栄(もちはる)
会津藩主:松平容保(かたもり)、桑名藩主:松平定敬(さだあき)
3階は松平家の館の一部が復元され、立派な能舞台もあります。
この日は「武将なりきり体験会」も行われ、武将に扮した海津市のマスコット「かいづっち」と会うことができました。
国営木曽三川公園アクアワールド水郷パークセンター
風車が目印のアクアワールド水郷パークセンターでは、「堀田」を見ることができます。
「堀田」は一部の土を掘って水路にし、土を盛り上げて田んぼにしたもので、江戸時代末期頃から低湿地帯で行われていた農法です。
水辺近くのイスに腰掛けてのんびり過ごすのもよし。様々なイベントが開催されていますので、参加するのもいいですね。
イベントは入り口の掲示板などでチェックできます。
自然体験では、堀田での田植えや稲刈りなどの体験もできますよ。
コーヒーと洋食の店 フォンテンブロー
石窯で焼き上げる熱々のピッツァが大人気の「フォンテンブロー」。昔ながらの洋食やオーダーケーキなど幅広いメニューで、地元の方々に愛されるお店です。
食材も地元海津の野菜を使用し、おいしさを引き出すことにこだわっています。
フォンテンブローの前身である「喫茶ギオン」は、1971年創業。
1995年に本格的ピッツァのお店として生まれ変わりました。
多数のメディアに取り上げられた「ギスパ」は、喫茶ギオン時代に創作されたメニューで「ギオン オリジナル スパゲティ」の略称。
太めの麺を自家製のデミグラスソースとケチャップで炒め、鉄板ごと提供されます。
チーズがたっぷり乗っていてボリューム満点!ちょっとなつかしい味です。
また、オリジナルメニューも開発されており、「もろこのピッツァ」は、海津市観光協会の『かいづの逸品』に認定されています。
こちらは、テイクアウトにしましたが、甘辛い味付けのもろことチーズの相性がバツグン!アンチョビのようなイメージでワインにも合いそう!
もろこが洋風メニューにもなるという新しい発見でした。
「もろこのピッツァ」にトッピングするもろこの佃煮は、同じく『かいづの逸品』に認定されている「かね善」のもの。
生きたままのもろこを、醤油・酒・砂糖だけで時間と手間をかけて佃煮にしています。
創業170余年の老舗です。
さらに、フォンテンブローは、海津市観光協会のオリジナルボトル(600円)やマイボトルなどを持参すれば、お水をいただける給水スポットにもなっているそうです。給水スポットを地図上に表示するアプリ「mymizu」に登録している所で給水できますよ。
暑い日にうれしい取り組みですね。
◆コーヒーと洋食の店 フォンテンブロー
住所:〒503-0654 岐阜県海津市海津町高須 543-3
TEL:0584-53-2344
営業時間:7:00~22:30
・モーニング:7:00~11:00
・ランチ:11:30~14:30
・アイドルタイム:14:30~17:00(お食事はピザ・トースト・サンドのみ)
・ディナー:17:00~22:00
定休日:水曜日
Bakery Café 151@
行列のできるお店として知られている「ベーカリーカフェ151@(イチゴイチエ)」。
フランスの片田舎にあるような可愛いお店が目を引きます。
お店の中に一歩足を踏み入れると、焼きたてのパンの香り。
天然酵母や米粉など素材にこだわった100種類以上のパンが並び、選ぶのが難しいほど。う~ん、全種類を食べてみたい!
イートインもテイクアウトも可能です。
岐阜県産のハツシモの米粉を使用したパンや、海津産の野菜、そして姉妹都市・鹿児島県霧島市の会社「霧島高原ロイヤルポーク」から直送される黒豚を使用したホットサンド「黒豚もちもちパニーニ」も有名なメニューの一つです。
冷やしクリームあんパンもありますよ。
お店は2棟あり、隣のカフェでは、モーニングやランチなど食事を楽しむことができます。
ランチメニューでは、パンがカゴに盛られて出てきておかわり自由!
サラダランチは、店内で水耕栽培されたフリルレタスやマイルドリーフが使われていて、シャキシャキとした食感を味わえます。
まず新鮮な野菜に感動しますが、生ハム、エビ、スクランブルエッグも付いており、バランスの良いメニューですね。
また、魚介のスープカレーは、ココナッツミルクが入っておりマイルドな味わい。
エビやホタテなどの魚介の他に、じゃがいもや玉ねぎがたっぷり入っていて食べ応えがありました。
さらに、このお店はJAF(日本自動車連盟)の優待施設でもあります。
JAFカードを提示すると、ランチ注文の方に限りランチデザートサービスが付きます。
あまりに居心地がよくて、長居してしまいそうな雰囲気。
店内からは楽しそうなおしゃべりが聞こえてきて、オーナーさんがくつろげる空間を作り上げているのだと思いました。
◆Bakery Café 151@
住所:海津市海津町馬目403-3
TEL:0584-53-0999
営業時間:bakery 8:00-19:00/cafe 8:00-17:00
・モーニング:8:00-10:30
・ランチタイム:11:00〜14:00
定休日:火曜、第3・4月曜
駐車場 : 大型駐車場完備
KAIJU CAFE
2022年6月オープン「KAIJU CAFE(カイジュウカフェ)」。
海津市平田町にある道の駅「クレール平田」に併設されているカフェです。
名前の由来は、海津がなまってカイジュウ。カイジュウ(怪獣)のように、「ガォーガォー」と海津を発信できるようにとの思いが込められています。
お隣の道の駅で販売されている新鮮な野菜のほか、卵を産まなくなった親鳥や鹿肉を使用し地産地消やフードロスも意識されています。
道の駅にこんな素敵なお店があるなんて!
数量限定の「カイジュウセット」をいただきましたが、5種類のお総菜と野菜が豊富なデリプレート、フォカッチャのピザ、具だくさんのカイジュウスープ、自家製ヨーグルトにドリンクがついて1280円。(飲み物によって値段が変わります)
見た目も豪華でブランチにぴったりでした。
スイーツの種類も豊富で、「こだわり卵の固めプリン」は人気メニュー!
海津市にある大橋農園の奥美濃古地鶏の産みたて卵、森島牧場の牛乳。オーガニック煎茶は、揖斐川町春日地区の傳六茶園(でんろくちゃえん)のもの。
カスタードプリン、煎茶プリンは、金・土曜日のみの限定販売でテイクアウトもできます。
「手摘みよもぎのもなかアイス」は、よもぎの香りとあんことのマッチングで、海津特産の草餅を食べているような感覚。
季節のフルーツソーダは、フルーツ酢のソーダ割りで暑い日におすすめです。
オーナーの西川 崇さんが、フルーツソーダに使われている「ハリヨの柿酢」を見せてくれました。
海津市産の完熟した富有柿を天然発酵させて作ったもので、「飛騨・美濃すぐれもの」にも認定されています。
フルーティな香りの秘密は、この柿酢にあったのですね。
南濃みかんのジュースは、西川さんが海津の中学生とクラウドファンディングで開発したもので、みかんを食べているかのような濃い味わいです。
生産者さんとの出会いから、カフェのオープンにつながったとのこと。地元を愛する気持ちが伝わってきます。
モーニングでは、パン、おにぎり、草餅のセットが楽しめます。
その他、鹿肉のソーセージなどのジビエやスイーツも販売されていました。
さらに、JAF(日本自動車連盟)の優待施設にもなっているため、JAFカードを提示すると、店内で食事の方に限り飲食代10%の割引が受けられます。
ここに来れば、地元のおいしいものに会える!
岐阜や海津の発信拠点として、気軽に立ち寄ることのできるお店です。
◆KAIJU CAFE(カイジュウカフェ)
住所:海津市平田町野寺2357-2 クレール平田内
TEL: 050-8884-2708
営業時間:8:00-17:00
・モーニング:8:00-10:30
・ランチタイム:11:00-14:00
定休日:火曜日
全席禁煙
おわりに
宝暦治水をきっかけにもたらされたのは、豊かな自然の恵みだけではありません。
岐阜県と鹿児島県で姉妹県盟約が締結されてから50年以上経つ今も交流が続いています。
鹿児島市にある鶴丸城の御楼門復元工事には、岐阜県産のケヤキ材が贈呈されました。
約700キロ離れた地でありながら結ばれた両県。
絶え間なく流れる川のように、このご縁がいつまでも続いてほしいと思いました。