地元レポーター発!旅のコラム

母なる御嶽山の恵みを感じて。飛騨小坂(ひだおさか)E-Bikeサイクリングツアー体験記

土庄雄平
土庄雄平
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令和5年6月に「NEXT GIFU HERITAGE~岐阜未来遺産~」に認定された飛騨小坂(ひだおさか)。この町は、飛騨高山と下呂温泉の間に位置し、御嶽山をはじめとする山々や川に囲まれた自然豊かな地域です。2025年には、そんな飛騨小坂の魅力を体験できる新たなアクティビティとして、E-Bikeツアーが誕生します。今回、そのツアーを一足早く体験してきましたので、その様子をレポートしたいと思います。

初心者でも大丈夫!スポーツ自転車のE-Bikeとは?

  • E-Bikeで飛騨小坂(ひだおさか)の魅力をめぐる

E-Bikeとは、電動アシスト付きスポーツ自転車のことです。25km/h以下のスピードの時に電動アシストが効くため、上りでもスイスイ進むことができます。今回ツアーで採用されているE-Bikeはタイヤが太く、舗装していない道を走破できる能力を備えているのも魅力です。


ちなみにスポーツ自転車に乗ったことのない初心者でも安心!ツアーでは実際に走る前に、スタッフが丁寧にレクチャーします。自転車に乗った経験さえあれば、ブランクがある場合でも、試走後すぐ走れるようになります。

ショートコースとロングコース。どちらに挑戦する!?

飛騨小坂観光協会で用意するツアーコースは以下の2つ。ショートコースは飛騨小坂を初めて訪れる方、ロングコースは体力に自信があり、感動や達成感を得たい方におすすめです。

  • ショートコースのハイライトは「がんだて公園」

ショートコース:飛騨小坂駅を出発し、道の駅 南飛騨 小坂はなももを経由、がんだて公園とその中にある絶景スポットをめぐります。往復25km弱のコースです。グルメスポットや炭酸泉の飲泉も楽しめるほか、御嶽山麓に育まれる自然を中心に、小坂の魅力を1日でギュッと満喫することができます。

ショートコースでも盛りだくさん!飛騨小坂の魅力をまるごと楽しめます。
  • ロングコースのハイライトは「御嶽パノラマライン」

ロングコース:1日目は飛騨小坂駅を出発し、御嶽パノラマライン(県道441号線)を経由して、御嶽山7合目にある秘湯・濁河(にごりご)温泉を目指します。2日目は、飛騨御嶽尚子ボルダーロードから日和田高原、高根乗鞍湖、鈴蘭高原をぐるっと周り、飛騨小坂の町に帰ってきます。1日目は45km弱(上りメイン)、2日目は75km弱(下りメイン)で、累積標高差は1,500mを超える上級者向けコースです。

これほど壮大で快適なロングコースを組めるのは御嶽山麓ならではだと思います!

飛騨小坂の魅力をギュッと満喫する「ショートコース」

  • 御嶽登山口の石碑がこの場所ならでは(ガイドの飛騨小坂観光協会 曽我隆史様)

ショートコースは、飛騨小坂駅周辺のポタリング(散歩をするように自転車に乗ること)から始まります。杉の丸太が使われた木造駅舎や、通り沿いのお店のシャッターに描かれた森林鉄道の絵、丸太をモチーフにした橋の欄干など、林業で賑わった飛騨小坂の伝統が今でも町に息づいています。数十年後には失われてしまうかもしれない景観をめぐって、写真に残しておくことも、訪れる価値の一つではないでしょうか。

  • 焼きたての五平餅とお団子

町をあとにして、田園風景を走りながら、飛騨小坂の名所・がんだて公園を目指します。小川のせせらぎや棚田、点々と佇む家など、日本の原風景に心洗われるようです。自転車ならではの疾走感を楽しめるでしょう。「道の駅 南飛騨小坂はなもも」では、飛騨産のえごまを使ったオリジナルの五平餅などをいただけます。焼きたての美味しさは格別です。地元産の野菜やお土産も気になりますが、帰りも通過するため、その時にチェックしましょう。

  • これぞ天然のウィル◯ンソン!?

川が3つに分かれるポイントから小坂川をたどり、巌立峡ひめしゃがの湯へ。日帰り入浴もおすすめなのですが、特徴的なのが飲泉場です。実はこの一帯、飛騨小坂温泉郷は国内屈指の高濃度天然炭酸泉が湧いていることで知られる温泉地です。どんな味がするかは飲んでからのお楽しみ!(笑)

  • 神秘的な雰囲気を放つ一ノ鳥居(ガイドの飛騨小坂観光協会 曽我隆史様)

巌立峡ひめしゃがの湯のすぐ近くには、一ノ鳥居があります。御嶽を開山した覚明行者の足跡が残る場所です。かつて登山道として使われていた古道の入口にあたります。ここからがんだて公園までの1km区間は、御嶽山麓の自然のパワーを感じられる素晴らしい区間。御嶽山の噴火を物語る溶岩の流れと、その上に苔むした森が広がる神秘を、自転車でめぐることでよりダイレクトに体感することができますよ。

  • 写真に収まりきらない、大迫力の巌立

御嶽の溶岩の絶壁「巌立(がんだて)」がトレードマークのがんだて公園。日本一の溶岩流の断面がむき出した姿は圧巻です。ここから三ツ滝まで軽いハイキングを楽しみ、さらに奥にあるあかがねとよ・からたに滝・どんびき平の3つの知る人ぞ知る名所を目指します。でこぼことした未舗装の林道もE-Bikeがあれば、まるでアトラクションのように楽しめますよ。登山愛好家の憧れの山・御嶽山ですが、その山麓にも冒険心をかき立てる天然の芸術作品が点在しています。小坂川のエメラルドグリーンにもきっと目を奪われるでしょう。


※がんだて公園は2024年12月15日~2025年3月下旬まで冬季閉鎖

  • 豚ちゃん定食がイチオシ

E-Bikeサイクリングを楽しんだら、昼食へ。時間があれば自転車で直接、時間に余裕がなければ、ツアー後に車で地元のお食事処「としちゃん食堂」へ立ち寄りましょう。みんなで鉄板を囲むスタイルで、郷土料理の鶏ちゃん・豚ちゃんを味わえます。決め手は美味しさを引き立てる生卵。人情味あるお母さんが迎えてくれるのも魅力です。

御嶽山麓を一周!濁河温泉を目指す壮大な「ロングコース」

  • 息が上がりすぎないペースで進もう

通年営業している中で、日本最高所にある温泉・濁河温泉を目指します。観光というよりは、御嶽山の自然を体感する壮大なサイクリングを楽しむ内容です。1日目はひたすら上りの道を進みますが、グイグイ進むE-Bikeに感動するでしょう。コツはギアを軽くして、ペダルを回すように漕ぐことです。一定のペースで息を整えながら進むのがおすすめです。

  • 山肌を覆い尽くす紅葉に感動

小黒川釣場を過ぎると、交通量が少なく静かな秘境に入ります。運が良ければ、ニホンザルなどの野生動物に出会えるかもしれません。季節が夏から秋、秋から冬へと移り変わる時期には、山の中で四季の変化を感じられます。

  • 御嶽山を望む溶岩流展望台

溶岩流展望台〜太平展望台の区間は、一級の山岳絶景ルート。目の前には御嶽山の山並みとともに、日本一の溶岩流の絶景が待ち構えています。流れる川、日本一数の多い滝、苔むした森、御嶽山周辺に湧く温泉、すべてが御嶽山の恵みです。ロングコースでは、そんな母なる御嶽山を自分の足で目指すという楽しさがあります。

  • 原生林に囲まれた秘湯に癒される

スタートから6〜7時間で、濁河温泉に到着です。旅館は全部で4軒あり、それぞれ異なる良さがあります。どのお宿を予約できるかは、参加してからのお楽しみです。泉質は三大美人泉質の一つに数えられる炭酸水素塩泉 (ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉)。原生林に囲まれる非日常のロケーションでドバドバと源泉掛け流しで供給されています。たっぷり動いた後の温泉と、地元の味覚が詰まったお料理におもてなしで、心身ともにパワーをチャージしましょう。

  • 文部科学省から指定を受けている日本で2ヶ所しかない!高地トレーニング強化拠点

ちなみに、濁河温泉には「御嶽濁河高地トレーニングセンター」という、知る人ぞ知る施設があるのをご存知でしょうか?ここはトップアスリートをはじめとするスポーツ選手が競技力向上のために利用する施設で、国内屈指の設備が整っています。そんなトレーニングセンターですが、なんと一般の方でも利用可能です。快適なお部屋に、1泊3食付きまでプランも選べ、源泉掛け流しの温泉まで入ることができます。トレーニング設備を活用するために訪れるのも良し、観光や登山の拠点として利用するのもおすすめです。


※御嶽濁河高地トレーニングセンターは2024年11月15日(水)~2025年3月31日(月)まで冬季休業

  • 御嶽山麓を下り尽くす爽快なサイクリング

2日目は濁河温泉から飛騨御嶽尚子ボルダーロードから高根乗鞍湖、鈴蘭高原をぐるっと周ります。距離は75km弱もありますが、ほとんど下りかつ道もしっかりと整備されており、国内屈指のロングサイクリングコースを駆け抜けていきます。御嶽山麓の大スケールの自然を駆け抜ける時間は、一言で言い表すのが難しい、アドベンチャーな感動体験です。

【取材後記】現地での温かい一期一会もツアーの魅力

  • 優しく迎え入れてくれたNPO法人飛騨小坂200滝の皆様

来年のツアーに向けて、ひと足早くE-Bikeサイクリングを楽しんできましたが、そこで感じたのは「小坂町の人々の活気」でした。20代、30代の若いメンバーが地域の魅力を引き出すために奮闘する姿を見たり、偶然にも、がんだて公園を整備しているNPO法人飛騨小坂200滝の方々に鶏ちゃんをご馳走になるというイベントもありました。地元を愛する人たちとの出会いも、このサイクリングツアーの大きな魅力だと思います。ぜひ飛騨小坂を訪れて、E-Bikeでの冒険を楽しんでみてください。

飛騨小坂観光協会の皆さんは私とも同世代。多様なバックグラウンドをもつメンバーが協働し、地域を活気づけようと頑張る姿から、いっぱい刺激をもらいました!

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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