地元レポーター発!旅のコラム

厳冬の西穂丸山を目指して。壮大なアルプスの絶景に出会う冬の日帰り登山

土庄雄平
土庄雄平
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白銀の世界に心を奪われる雪山登山。純白の雪に包まれた自然の中で、厳しい環境ながらもその美しさを堪能できます。今回は、登山初心者でもしっかりと準備をすれば挑戦できる「西穂丸山(にしほまるやま、標高2,452m)」をご紹介します。新穂高ロープウェイを利用して、北アルプスの壮大な世界へと足を踏み入れましょう。

雪山登山をする際に大事にしたいこと

  • 冬用の登山靴とアイゼン

雪山登山は、無雪期よりも体力や準備が求められます。入門者が雪山登山に挑戦する際に、重要なポイントを簡単にまとめてみました。


  • 十分な体力を事前に鍛える
  • 雪山に適した装備を用意する
  • 登山前には必ず登山計画書(登山届)を提出する
  • 登山者の多いメジャーな山を選ぶ
  • 当日の天候が悪ければ、無理せず入山を中止する
  • YAMAPなどの登山地図GPSサービスを活用する


まず最優先すべきは、氷点下の気温に対応できる装備を整えることです。靴やウェア、手袋はもちろん、靴の中に雪が入らないようにするゲイターや、雪上でも滑らずに歩けるアイゼンも準備しておくことが重要です。


次に、当日の天候を確認しながら無理のない登山を心がけることが大切です。時間に余裕を持つだけでなく、濃霧や吹雪、強風の場合は、入山を控えるか、状況に応じて撤退する判断をしましょう。

西穂丸山へのアクセス〜新穂高ロープウェイを利用

  • 笠ヶ岳を背に運行する新穂高ロープウェイ

西穂丸山への登山口は、新穂高ロープウェイの西穂高口駅を先に進んだ場所にあります。厳冬期の北アルプスの稜線まで、一気にアクセスできるロープウェイの利点は大きいです。ロープウェイの醍醐味は、乗車中や西穂高口駅の展望台から広がる北アルプスの絶景にあります。

  • 雪に覆われた北アルプスの世界へ

ピラミッドのようにそびえる西穂高岳(標高2,909m)、雪壁のようにそそり立つ笠ヶ岳(標高2,898m)、天を突くような鋭い槍ヶ岳(標高3,180m)など、北アルプスの主要な山々が目の前に広がります。荒々しい山肌と滑らかな雪面が織りなす、この時期だけの迫力ある景色に、思わず息を呑んでしまうはず。

登山の前に槍の回廊へ。霧氷の絶景が待っているかも

  • 純白の山並みと槍ヶ岳

西穂高口駅から登山口に向かう途中には、2022年10月に完成した「槍の回廊」というブーメラン型の展望デッキがあります。展望デッキからは、大迫力の北アルプスが広がり、その一角には槍ヶ岳の”穂先”が見えます。ここを通過するだけで、厳冬期の北アルプスの中に足を踏み入れたかのような気分を味わえます。

  • 青空と霧氷の爽やかなコントラスト

気候条件が揃えば、霧氷(空気中の水分が過冷却で木々に付着する現象)が見られることも。冬の山ならではの自然が作り出す美しい光景です。登山口は槍の回廊から徒歩約5分の場所にあり、山小屋が目印となっています。天気の良い土日休みであれば、しっかりトレース(足跡)が残されていることも多く、安心して雪山の世界に入山できると思います。

西穂山荘への道のり。凍えるシラビソの森を越えて

  • 道迷いの心配はなく安心!

西穂丸山が雪山入門に最適とされる理由は、その歩きやすいコースにあります。西穂山荘までの約1.8kmは、シラビソの森をゆったりと進むルートです。急なアップダウンがほとんどなく、遭難や滑落のリスクも心配ありません。しかし念のため、雪山の専用装備であるアイゼンを履き、安全を確保して進んでいきましょう。

  • 霧の世界から束の間の青空

純白に染まった森は、雪がない時期とは違い、さまざまな表情を見せてくれるのが魅力です。雪面に光が反射して紋様を描いたり、木々から垂れる氷柱が輝いたり、明暗のコントラストで浮かび上がる樹氷など、絶好のシャッターチャンスが続きます。また、雪を踏みしめる感触も雪山特有の楽しみです。

冬の高山から広がる、乗鞍岳と白山の雄大なパノラマ

  • いくつもの峰を育む乗鞍岳

登山を開始してから約1時間半で西穂山荘に到着します。樹林帯を抜けると、一気に視界が開けます。正面には、いくつもの峰が連なる乗鞍岳(標高3,026m)がそびえ、その反対側には、山間の町を挟んで白く輝く白山連峰が広がります。冬の朝には雲海が広がることも多く、壮大な景色が楽しめます。

  • 登山道の先には前穂高も顔を覗かせる

ここから西穂丸山の山頂までが、登山の本番です。高い木々がなく、遮るもののない稜線を進むと、風が一層強く感じられます。遠くから眺めていた北アルプスの峰々が目の前に迫り、まるで別世界に足を踏み入れたような感覚を味わうでしょう。シュカブラ(風紋)など、雪面が自然のアート作品のように美しい模様を描くこともあります。

西穂丸山の山頂から広がる、西穂高岳の銀世界

  • 青空との対比が美しい冬の西穂高岳

西穂山荘から約30分ほど歩くと、西穂丸山(標高2,452m)に到着します。山頂からはパノラマの絶景が広がり、息を呑むほどの景色を楽しめますが、道中には危険な箇所がないので安心です。山頂標識の前には、大迫力の西穂高岳がそびえ立ち、冬は上級者のみが立ち入れる聖域となっています。夏に登頂経験がある筆者にとっては、どこか懐かしく、憧れの山でもあります。

  • 雲海を挟んで遠く霊峰・白山を望む

中級者であれば、西穂丸山からさらに進んで西穂独標(標高2,701m)まで行けますが、雪山登山の経験が少ない方は、西穂丸山で引き返すのが無難です。帰りには、乗鞍岳へ続く稜線を進みながら雄大な下山を楽しむことができます。下山時には足を滑らせやすいため、必ずアイゼンを装着してくださいね。

奥飛騨温泉郷で楽しむ、下山後の贅沢な雪見風呂

  • 広々と雪見温泉を楽しめる荒神の湯

下山後に、雪見温泉に入れるのも、西穂丸山登山の醍醐味です。新穂高ロープウェイの新穂高温泉駅の周辺には、素晴らしい温泉が点在しています。中でもおすすめが、栃尾温泉「荒神の湯」です。岩造りの露天風呂の周囲には、奥飛騨の美しい雪景色が広がります。日によっては少しぬるい日もありますが、それはそれで長湯できるのが嬉しいです。


しっかり準備を整えれば、入門者でも挑戦できる「西穂丸山」の雪山登山。非日常の奥飛騨冬山の冒険に出かけてみてはいかがでしょうか?

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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その他、関連イベントや連携イベントも多数開催されています。
詳しくは、公式サイトをご覧下さい。


【ぎふ灯り物語 2025】
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◆時 間:17時~20時30分 (最終入場 : 20時)
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