地元レポーター発!旅のコラム

一足早い食欲の秋へ出発。「明知鉄道 秋の食堂車(きのこ列車)」体験レポート

土庄雄平
土庄雄平
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うだるような夏が終わり、少しずつサラッと快適な秋晴れを感じるこの頃。いよいよ秋の行楽シーズンも目前です。秋といえば、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。綺麗な紅葉という方もいらっしゃると思いますが、やはり食欲の秋ということでグルメですよね。きのこや栗、果物など、秋にはたくさんの味覚を味わえます。そこで今回は、一足早く食欲の秋を味わえる特別な列車「明知鉄道 秋の食堂車(きのこ列車)」をご紹介したいと思います。

東濃のローカル線・明知鉄道とは?

  • 自然風景に溶け込む単線

およそ90年の歴史をもつ「明知線(あけちせん)」は、恵那から明智までをつなぐ総延長約25kmのローカル線。もともとは旧国有鉄道でしたが、1985年から明知鉄道に運営が引き継がれました。今では通学をはじめとして地元の足として使われる路線ですが、1年を通じてイベント列車(食堂車)が催行されているのはご存知でしょうか。


2023年は、おばあちゃんのお弁当列車、寒天列車、きのこ列車、枡(ます)酒列車、じねんじょ列車の5つが時期によって運行しています。「観て!食べて!明知鉄道でしか体験できない旅を!」が、イベント列車のコンセプト。お弁当やお酒を楽しみつつ、車窓に流れていく四季折々の風景を眺める、忘れられない時間を過ごせます。

9月1日から今季も運行!秋の食堂車(きのこ列車)

  • 恵那駅からローカル線の旅へ

今回、私が乗車したのは「きのこ列車」。9月1日〜11月30日の期間、火曜日から日曜日までと、祝日の月曜日に運行している食堂車です。恵那駅12:25発→明智駅13:19着の1日1便を運行しています。乗車には5日前までに明知鉄道(0573-54-4101)への電話予約が必要で、最低催行人数7名以上での運行となります。


料金は大人5,500円、子供(小学生以下)3,300円で、テーマに合わせた豪華なお弁当に加えて、明知鉄道の通行手形(1日乗車券)と500円分のお土産が付いています。往路はお弁当を味わいつつ電車旅を満喫し、終点の明智駅に到着した後は、1日乗車券を使って復路を自由に乗り降りして、明知鉄道沿線を散策できます。


ちなみに私は普段、名古屋に住んでいるので、名古屋駅から恵那駅までJR中央線でアクセスし、明知鉄道へと乗り換えました。名古屋からでも1時間少しという場所なので、地元の方だけでなく東海圏の方でも利用しやすい列車ですね!現地までのアクセスを含めて、都会から田園地帯まで、風景変化に富んだ日帰り電車旅を楽しむことができました。

秋の味覚がいっぱい。懐石料理のようなお弁当

何と言っても「きのこ列車」の醍醐味は、秋の味覚が詰まった豪華なお弁当でしょう。このお弁当ですが、3つのお店が日替わりで担当し、どのお弁当がいただけるかは、予約した日次第。中には「このお弁当を食べたい!」という方もいらっしゃるので、その場合お電話すると、各お弁当の日を教えてくださるそうです。


以下一例ですが、お弁当の内容をご紹介したいと思います!

  • 山岡駅かんてんかんさんのお弁当

こちらは山岡駅かんてんかんさんのお弁当。きのこ小鉢四種を中心として、土瓶蒸し、郷土の味二種、かんてんかん特製三種、天ぷら、強肴(しいざかな)、ご飯、水物果物までついており、まさに懐石料理のラインナップです。きのこはどれも食感がよく滋味深い美味しさ。中でもロージ茸醤油和えが、ほろ苦く大人な味わいでした。


また鮎の甘露煮や、恵那鶏の天ぷらなど地元食材に加え、山岡細寒天結び揚げや、寒天入り特製厚焼き卵など、名産の寒天を使用したオリジナルメニューが絶品です。さらに秋の味覚である、きのこの炊き込みご飯はお代わりし放題!松茸の入った土瓶蒸しで心が安らぎます。

  • 明智ゴルフクラブさんのお弁当

こちらは明智ゴルフクラブさんのお弁当。前菜盛りに、土瓶蒸し、きのこの小鉢三種類、和え物、天ぷら、ご飯、デザートがセットになっています。きのこの小鉢はこぢんまりとしていますが、丁寧に調理されており、食感や風味が生きています。そして何と言っても、抹茶塩でいただく舞茸とエリンギの天ぷらがたまりません。実は鮎の甘露煮も隠れています。


きのこの炊き込みご飯と土瓶蒸しは、各お弁当共通なのですが、ご飯についてはお店ごとに味付けが違うのが面白いところ。明智ゴルフクラブさんの炊き込みご飯は、出汁の味は控えめで、素材の風味や甘さがご飯にしっかりと移っていました。

恵那から明智まで。車窓に流れる日本の原風景

  • 車窓に映える沿線の美しい緑

お弁当で食欲の秋を味わいつつ、流れていく車窓の風景に目を向ける時間こそ、食堂車を楽しむポイントです。明知線はわずか25kmほどの区間で、2つの峠を越える急勾配と急曲線が連続する路線。片道約1時間ほどの乗車で、みるみるうちに景色が変わっていくのが特徴です。


例えば、恵那駅から2つ目の「飯沼駅」。通常、駅は急勾配の場所に作られることは認められていないのですが、特認により作られた無人駅です。恵那の街中から山間風景へ変化していく一つ目の中継地点になっています。続いて、農村景観日本一という称号が与えられた「阿木駅〜飯羽橋駅」の区間へ。金色に染まる稲穂を眺めながら進んでいきます。そして、岩村城下町を通過する区間では、一瞬町並みを望めるポイントも。

  • スタートは恵那市街の都会の景色

緑の濃い森の中を走ったり、一気に開ける田園風景を通過したり、勾配がある要所を越えたり、車窓の風景を眺めていても飽きることがありません。むしろ日本の原風景として「鉄道が深く自然や暮らしに溶け込んでいるのだなぁ...」と、ローカル線の素晴らしさを再確認させてくれます。絶景というより、「なんだか良い」という景色が連続する車窓の風景こそ、明知鉄道ならではの魅力だと思います。

通行手形を活用!復路は自由度の高い電車旅を

電車に乗って約1時間、終点の明智駅へ到着したら、食堂車の体験は終了です。旅情豊かな食&車窓風景の旅を楽しみ、すでに大満足なのですが、ここで終わらないのが明知鉄道の日帰りプラン。前に触れたように、通行手形(1日乗車券)を使って、復路のスケジュールを自由に組むことができます。ここからは出発した恵那駅まで自由です。


明知鉄道沿線には、全国的にも有名で、ロケ地の定番にもなっている「岩村城下町」をはじめとして様々な個性豊かなスポットが点在しています。今回は私が足を運んだ場所をモデルコースとしてご紹介します。

鉄道が見えるCafe アケチカケル

  • 期間限定のいちごのスムージー

13:19に明智駅に到着し、次の折り返し電車は明智駅13:59発。約40分ほどの時間があります。そこで立ち寄ったのが、駅に併設しているカフェ「アケチカケル」さんです。地域の素材と人材がかけ合わさる=融合することをコンセプトにしており、地元の方の憩いの場所となっています。


いただいたのは、期間限定の「いちごのスムージー(税込650円)」。DAIONJI FARM(恵那市山岡町)のいちごを使用した、優しい甘さのスムージーになめらかなクリームが合わさって、暑い日中には最高のクールダウンでした!

岩村城下町とカステラcafeカメヤ

  • 江戸時代にタイムスリップしたような景観

明智駅13:59発→岩村駅14:20着の電車で、岩村城下町へ。この場所はかつて亡くなった夫の代わりにこの地を治めた女城主の城下町として有名です。全長約1.3kmの古い町並み周辺には、往時の面影を残す商家や旧家が並び、まるで歴史の中にタイムスリップしたかのような時間が流れています。


趣ある町並みを散策しながら、至るところにある細かな発見を楽しみ、カステラや五平餅といったグルメも味わえます。今回は「カステラcafeカメヤ」さんへ立ち寄り、中庭を眺める古民家カフェの空間で、冷たい飲み物とふわふわで美味しいカステラを一緒に味わいました。平日の岩村城下町は空いているので、同行者と水入らずの時間を過ごせるのもポイントです。

えなてらす 恵那市観光物産館

  • 松浦軒本店の栗きんとん(税込250円)

岩村城下町をぶらりと散策し、岩村駅16:49発→恵那駅17:18着の電車で、恵那駅まで戻りました。そして最後、恵那駅でJRへの乗り換えの時間があったので、「えなてらす 恵那市観光物産館」に立ち寄ることに。ここでは恵那川上屋や松浦軒本店など、地元のお菓子屋さんのお土産が揃っています。旬には少し早かったのですが、恵那名物の「栗きんとん」を購入。なめらかな舌触りと、深い甘みがたまらない美味しさでした!


また信州産の梨は5個入りで、ワンコインにお釣りが来るという産地価格。自宅に帰って切ったらみずみずしく、購入して大正解だと家族大喜びです。

いかがでしたでしょうか?今回は食欲の秋を楽しむのにもってこいな「明知鉄道 秋の食堂車(きのこ列車)」をご紹介しました。電車の中でいただける極上のお弁当はもちろんですが、車窓から眺める沿線の風景、そして自由に散策できる柔軟さも魅力です。ぜひこの秋、思い出に残る電車旅を計画してみては?

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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