地元レポーター発!旅のコラム

日本最高所の道へ!ヒルクライマーの聖地「乗鞍スカイライン」を徹底解説

土庄雄平
土庄雄平
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「乗鞍(のりくら)」といえば、一般的には北アルプス「乗鞍岳(のりくらだけ、標高3,027m)」ですが、サイクリストの中では、その登山拠点に当たる畳平(たたみだいら、標高2,702m)を結ぶ、二つの山岳道路を「乗鞍」と呼びます。

環境規制により、一般車両が通行できなくなって以来、自転車だけが到達できる国内最高所の道として知名度を上げ、今では全国各地から坂好きが集まる”ヒルクライマーの聖地”となりました。

私も一度、学生時代に訪れて以来、その「乗鞍」に魅せられた一人です。今回は中でも、岐阜県高山側の「乗鞍スカイライン」のヒルクライムコースをご紹介します。

ヒルクライマーの聖地「乗鞍スカイライン」

「乗鞍スカイライン」は、岐阜県高山市(飛騨)側から乗鞍岳にアプローチする山岳観光道路です。標高1,684mの平湯峠を起点とし、標高2,702mの畳平まで延長14.4kmの長さを誇っています。


かつて一般車両も通行可能な道でしたが、2003年5月から自然保護を目的に、マイカー規制が開始されました。現在は、登山バス・タクシー・自転車でしか通行ができません。

通行可能期間は、5月中旬〜10月末まで。それ以外の時期は冬期閉鎖となります。残雪の壁、夏の高山植物、山上を彩る紅葉など、訪れる時期により表情を変えてくれます。

みられる絶景と登りごたえがあるコースが、全国の坂好きから支持を得ているのです!

スタートは平湯峠にするか?ほおのき平にするか?

「乗鞍スカイライン」に挑むとき、スタート地点をどこにするかで二者に分かれます。


まずは、乗鞍スカイラインの「平湯ゲート(標高1,684m)」を起点にする場合。こちらは先ほどご紹介したように、標高差約1,000m、距離15km弱、平均勾配7%の内容です。平湯峠には、数十台停められる無料駐車場が設けられています。

7月〜9月は、ご来光バスの運行に伴い、早朝3時半からゲートが開くので、日の出前に出発するサイクリストもいらっしゃいます!

もう一つが、登山バスの発着所でもある「ほおのき平駐車場(標高約1,235m)」を起点とする場合。こちらになると標高差約1,500m、距離20km弱、平均勾配7.4%となります。より登り応えを求める、ストイックなサイクリストが選んでいるイメージです。


こちらには1,500台も停められる広い駐車場が完備されているほか、トイレなどの設備も充実していますよ。

正直、平湯峠までが一番キツい!これを上り切れれば、乗鞍スカイラインを楽に感じられるかも!?

高確率で雲海が待つ「夫婦松(めおとまつ)展望台」

平湯ゲートをくぐると、長い長い「乗鞍スカイライン」が始まります。勾配がきつめな区間も登場するので、ギアを軽めにして呼吸を整えつつ進みましょう。


まず目指すのは、約2.8kmの場所にある「夫婦松展望台」です。前半は樹林帯を縫うように、ひたすら標高を稼いでいく区間。まだ景色は開けませんが、すでに漂う山岳情緒がたまりません。

道の先を見ると気が遠くなるので、足元を見ながら進むのも手です(笑)登山バスにだけ注意!

15分〜30分ほどすれば、乗鞍スカイラインの休憩ポイント「夫婦松展望台」へ到着です。その名の通り、仲良く並んだ二本の松がトレードマークとなっている広場になります。


ここまでくると、景色が開け、飛騨高山の町や、天気が良ければ名峰「白山(はくさん、標高2,702m)」まで望むことができます。早朝には、雄大な雲海が出現することも!

平湯ゲートからスタートした方にとっては、ゴールに到着するまで、最初で最後のトイレがあるので、ぜひ立ち寄りましょう。

日本屈指の山岳絶景を望む「十三曲がり」

「夫婦松展望台」から約800mほど進むと、ヘアピンカーブが連続していきます。全部で13回ほど登場するので、個人的に「十三曲がり」と呼んでいる区間です。


平均勾配が少し緩むのが救いですが、「いつになったら終わるのか?」とストレスがたまるので(笑)、回数を数えながら登ってみてください。透き通った青空をみながら上ると、一呼吸置けますよ。

カーブではイン側の勾配がキツくなるため、少しアウトコース寄りに曲がるのがオススメです。

前半は鬱蒼とした樹林帯ですが、十三曲がりも後半に差し掛かると、少しずつ北アルプスの世界が顔を見せてきます。


上高地の奥にそびえたつ標高3,000m級の「穂高連峰(ほだかれんぽう)」や、特徴的な「槍ヶ岳(やりがたけ、標高3,180m)」など、オールスター勢揃い。カーブを曲がるごとにチラ見する山岳絶景がたまりません!

「十三曲がり」を越えれば、ゴールまであと半分弱の7kmです。

まさに雲上のスカイライン!「森林限界」の直線道路へ

「十三曲がり」を終えて、一瞬だけ下りに入ると、森林限界が近いという合図。森林限界とは、高い木々が生育しない標高の限界点を指します。「乗鞍」でいうと、標高2,400m前後です。


森林限界を迎えると、一気に視界が開け、そこは雲上の道に。開放感がたまらないストレートが続く「乗鞍スカイライン」のハイライトへと入ります。

雲の上を駆け上る臨場感は「乗鞍スカイライン」ならでは!

スタートと比べると、劇的に味わえる景色が変わります。勾配がキツいのは、次に現れるS字カーブまで。あと少しの辛抱です。


なお、ただ通り過ぎるにはもったいないほどの絶景区間。バスに注意しながら、ぜひ足を止めて、愛車との写真撮影を楽しんでくださいね。

ここまでくると感動で疲れを忘れるので、自転車に乗るのが少し楽になります(笑)

グランツールを彷彿!絶景のS字カーブ〜桔梗ヶ原(ききょうがはら)

ゴールまで、約4km弱の場所にある「S字カーブ」は、グランツールを彷彿させる景色として、サイクリストの間で話題を呼んでいます。


グランツールとは、海外の三大自転車レースの総称。つまり、それほど日本離れした景色を誇っている道ということを物語っていると言えるでしょう。

学生時代に訪れたとき、この景色をみたときの感動は今でも忘れられません!

2回目のS字カーブを過ぎると、いよいよゴールの畳平までラストスパート!途中には「桔梗ヶ原(ききょうがはら)」というハイマツ帯を走ります。


乗鞍岳に向けて吸い込まれるような道、圧倒的な高度感開放感。かき立てられる高揚感を胸に、思わず笑顔で走り抜けられるはず。

夏には道端に咲く、高山植物の群落に目を奪われます。

乗鞍登頂!「日本最高所の道」を踏む

乗鞍岳への登山拠点にして、乗鞍スカイラインのゴール「畳平」に到着したら、標識と一緒に写真撮影を行いましょう。


「国内最高所の道を踏破した!」という達成感とともに、周囲に広がる非日常の山岳世界に癒されます。仲間と頑張りを共有すれば、感動もひとしおです。

畳平に自転車を止めて、剣ヶ峰(けんがみね)山頂まで登山をするという楽しみ方もあり!

なお近年、密かに人気となっているのが、県境に立つ「日本一高いバス停」。正確には、こちらが道における国内最高所のポイントで、標高は2,716m


※このポイントは長野県松本市側の乗鞍エコーラインになります。

こちらでも愛車の記念写真をお忘れなく!

以上、ヒルクライマーの聖地「乗鞍スカイライン」について、ご紹介してみました。ハードルが高いと思われがちなコースですが、根気よく登ればどなたでも達成可能です。天気や服装には気をつけながら、ぜひ挑んでみてください!

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

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