地元レポーター発!旅のコラム

錦秋の飛騨を歩く。天生県立自然公園「籾糠山&天生湿原」紅葉トレッキングレポート

土庄雄平
土庄雄平
投稿日;
飛騨地方も秋が深まり、紅葉が美しく色づき始める季節となりました。岐阜でもっとも有名な紅葉スポットといえば、奥飛騨温泉郷の新穂高ロープウェイが挙がりますが、ほぼ同時期に素晴らしい紅葉を楽しめる場所があるのはご存知でしょうか?

それは天生(あもう)県立自然公園にある「籾糠山(もみぬかやま、標高1,744m)」です。世界文化遺産・五箇山の合掌造り集落の裏山とも言うべき、手つかずの自然が残る美しい山で、絶景の紅葉トレッキングを満喫することができます。

パステルカラーの紅葉が広がる「天生峠」ドライブ

  • 酷道とも揶揄される国道360号線・天生峠

今回ご紹介する籾糠山の登山口があるのは、世界文化遺産・白川郷合掌造り集落と、飛騨市河合を隔てている「天生峠(あもうとうげ、標高1,289m)」です。国道でありながら酷道と呼び声高い、国道360号線の最高所に位置しています。


どちらからもアクセスできますが、五箇山方面は狭路に加え、見通しの良くないカーブが連続するため、飛騨河合側からアクセスするのがおすすめ。白川郷からアクセスする場合は、特に運転に注意しましょう!

  • 後半はカーブを曲がるたび、見事な紅葉に感動

天生峠から籾糠山までブナやダケカンバの原生林が育まれており、10月中旬を迎えるとポツポツと紅葉に彩られます。天生峠までの残り2kmほどに差しかかると、まるで絵画のような紅葉の風景が展開!


高さのある木々から道端の低木にいたるまで、オレンジ・赤・黄色に染まり、どこかメルヘンチックな情緒を醸し出しています。入山前のドライブから息を呑む紅葉を鑑賞できますよ。

紅葉に包まれる別天地「天生湿原」へ絶景ハイキング

  • スタートの駐車場から紅葉が包み込む
  • 協力金500円を納めて入山
  • 立派な標識があり道迷いの心配なし
  • 序盤から紅葉のトンネルを歩く
  • 展望ポイントに広がる壮大な景色

天生峠の駐車場に車を止めたら、登山口で少しレクチャーを受けて入山します。手つかずの美しい自然が根付く天生県立自然園ですが、地元の方々のボランティアによって守られているのが素晴らしいですね。


天生峠から天生湿原までは片道約30分。道も良く整備されていて歩きやすく、不明瞭な箇所もないため、登山初心者の方でも安心です。

  • まるで絵画の世界を歩くようなハイキング
  • 被写体をさまざま変えるのも楽しい
  • ナナカマドと原生林の共演
  • 池塘に映り込む紅葉も美しい

天生湿原に到着すると、一面金色に染まった湿原を囲むように、鮮やかに色づく原生林が広がります。そのスケールは壮大!紅葉していない木がひとつもないほど、周囲一体全て鮮やかに色づく風景には感動のひとことです。


まるで森というキャンバスに、色とりどりの絵の具を落としたよう。ハイキングのお客さんはいらっしゃいますが、秘境というべきロケーションにあるため、静寂のなか紅葉を鑑賞することができますよ。

黄金色に輝くカツラ門が待つ「カラ谷登山道」を登る

  • 黄金色に包まれるカラ谷登山道

天生県立自然公園の最高峰である籾糠山へは、カラ谷登山道、ブナ探勝路、木平探勝路の3つのコースがあり、カラ谷分岐からスタートします。


いずれのコースも山頂までの所要時間は片道約1時間30分で、難易度もほぼ同じです。一般的には、カラ谷登山道を使って登り、下山にはブナ探勝路または木平探勝路を利用するルートが人気です。


いずれのコースも紅葉最盛期には、オレンジ色のブナ紅葉のトンネルを進む道を歩きます。進めば進むほど色づきも鮮やかで、一つひとつの巨大なブナの存在感にも圧倒されるはず。

  • 陽光に照らし出される神秘的なカツラ門
  • 天生県立自然公園の悠久の自然を物語る場所
  • 美しさと力強さを感じさせる巨木

そんなカラ谷登山道の目玉ともいえるスポットが「カツラ門」です。複数のカツラの木が絡み合い、まるで自然の門のような形状をしているためその名が付けられました。


柔らかな光に照らされ、燦然と輝く巨大なカツラの木。原生林が見せるありのままの姿、その天然の芸術作品に心奪われます。そして見上げれば、頭上に広がる紅葉の天井も、思わず息を呑むほど美しいです。

  • 人を入れれば木のスケールも一目瞭然
  • 紅葉を背景に標識ジェニック
  • さまざまな色が同居する紅葉の風景
  • 青空に映える紅葉の天井
  • 高低差のある紅葉のトンネルを進む

カラ谷登山道では、山頂に至るまで2回の分岐が現れます。標高約1,520mの木平分岐と、標高約1,620mの籾糠分岐です。そしてこの分岐の間こそ、最も色鮮やかな紅葉のトンネルを歩ける区間と言えます。


高低差があるため、下から巨木を見上げるような構図も魅力。進むごとに木々一つひとつの力強さと美しさに魅せられ、息が上がっていることを忘れて、夢中で登山を楽しむことができますよ。

紅葉の原生林を眼下に見渡す「籾糠山山頂」

  • ここから山頂まで、標高差は約120m

籾糠分岐を通過すると、山頂まではラスト30分の道のりです。前半はしばらくなだらかで、オレンジ色のブナ紅葉に包まれる美しい登山道が続いていきます。


後半は傾斜がややキツいので、マイペースで登っていきましょう!また足を滑らさないようご注意ください。登りが終わるのと同時に、開けた高台に到着したら山頂の目印です。

  • 飛騨北部の大パノラマが展開
  • 眼下には進んできた原生林を望む
  • 明暗が織りなす極彩色の絶景
  • 雲と山肌の雄大な対比
  • 金剛堂山とパッチワークの紅葉

ブナの原生林を育む秘境の山ですが、意外にも景色は開けています。先ほど歩いてきた紅葉の原生林を見下ろし、山肌を覆う極彩色の風景を一望できます。雲や陰の具合で、表情が変わるのも見事です。


そんな絶景の先には、岐阜と富山を隔てる「金剛堂山(こんごうどうざん、標高1,650m)」など雄大な山並みが広がります。同様のロケーションを誇る山がなく、なかなか遠目から眺めることのない飛騨北部のパノラマに感動です。

静かな色彩の森と裏カツラ門を通る「ブナ探勝路」で下山

  • 生命力を感じさせるブナの原生林
  • 静謐な時間と黄金色に包まれる道
  • 一つひとつ見応えのあるブナの巨木

籾糠分岐まで来た道を戻って、ブナ探勝路へ進めば、天生峠〜籾糠山の最短一周コースを歩くことができます。ブナ探勝路という名称の通り、ブナの原生林の密度が高く、静かな樹林帯を進むコースです。


全体的になだからで、危ない箇所はなく、色彩あふれる紅葉に抱かれるような道が続いていきます。紅葉とともに奥行きのある道の風景が楽しめるのもポイントです。

  • 通称・裏門を通過してカラ谷分岐へ
  • 見上げれば、どのポイントでも紅葉鑑賞
  • ひたすらに鮮やかで爽快な秋の天生湿原
  • 水面に映り込む紅葉の宝石

道中の見どころの一つは、下りの途中にある通称「裏門」です。カラ谷登山道のカツラ門よりも規模は小さいものの、ブナの木々の間を通り抜けるように設けられた道は趣があります。


下り切れば、カラ谷分岐へ到着。そこから徒歩約5分ほどで、天生湿原まで戻ってくることができますよ。帰りは時間を気にすることなく、天生湿原の極彩色の紅葉を満喫しましょう!

世界文化遺産の裏山が魅せる紅葉を鑑賞しよう

  • 紅葉に包み込まれるトレッキングは唯一無二

いかがでしたでしょうか。今回は天生県立自然公園の籾糠山と天生湿原のトレッキングコースをご紹介しました。これまで数々の紅葉名所を訪れた筆者ですが、これほど鮮やかでスケールの大きい原生林を楽しめる山は他にありません。


このエリアでは白川郷の合掌造り集落が世界文化遺産に登録されてますが、この天生県立自然公園も含めても良いのでは?と思うほど、圧倒的な自然が広がっています。ぜひこの秋、美しい紅葉を堪能しに訪れてみてください。

この記事のレポーター

土庄雄平
土庄雄平
1993年生まれ、愛知県豊田市出身。会社員のかたわら、山岳自転車旅ライターとして活動する。飛騨地方の雪山が大好物。春は北アルプス麓の桜に見惚れ、夏は清流と瀑布に涼み、秋は霊峰白山の紅葉に抱かれる。

記事一覧

初心者にも最適!​​岐阜県の絶景・登山スポット10選 美濃から北アルプスまでご紹介
初心者にも最適!​​岐阜県の絶景・登山スポット10選 美濃から北アルプスまでご紹介
more
地元ライターおすすめ!岐阜の雪山登山スポット4選。冬の絶景・霧氷を愛でる山旅
地元ライターおすすめ!岐阜の雪山登山スポット4選。冬の絶景・霧氷を愛でる山旅
more
「この道、バイクで走りたい!」四季折々美しい、岐阜の道5選
「この道、バイクで走りたい!」四季折々美しい、岐阜の道5選
more
雪見温泉とここだけの絶景が待つオフシーズン!冬の奥飛騨ならではの魅力と楽しみ方をご紹介
雪見温泉とここだけの絶景が待つオフシーズン!冬の奥飛騨ならではの魅力と楽しみ方をご紹介
more

関連記事

いま読まれている人気記事

センスの良いお菓子で喜ばせたい!岐阜の今っぽい手土産10選
センスの良いお菓子で喜ばせたい!岐阜の今っぽい手土産10選
昔から定番の岐阜の手土産もいいけれど、友人や取引先など大切な人への送りものをするからには、最新でセンスの良いものを選びたいですよね。岐阜では現代のニーズに合わせてアップデートされた老舗菓子店のお菓子や、新進気鋭の新店などが続々と誕生しています。今回はその中から特におすすめの10商品をご紹介します。
more
飛騨高山ご当地グルメ!~高山ラーメン(中華そば)6選~
飛騨高山ご当地グルメ!~高山ラーメン(中華そば)6選~
国内屈指の観光地、飛騨高山を訪れたら、絶対におさえておきたいのがご当地グルメの「高山ラーメン(中華そば)」です!

地元民には昔から「中華そば」や「そば」という呼び名で親しまれ、日常的に食べられているご当地ラーメン。人気アニメ映画『君の名は。』の中で、主人公達が「高山ラーメン」を注文していたことから注目が集まり、観光客や県外のお客様には「高山ラーメン」という呼び名が浸透していったとの情報もあります。
とは言っても、「高山ラーメン」を提供している老舗店のほとんどが「中華そば」とのれんを出しているため、お店を探す際はご注意ください。

飛騨高山にたくさんある「高山ラーメン」店ですが、馴染みのお店を決めてしまうと、どうしてもそこへ通ってしまいがち…(筆者である私は、家族の影響もあり子供の頃から老舗店「まさごそば」一択でした)。今回は馴染みのお店から飛び出して、私が実際に食べ歩いたオススメ店を6店ご紹介します!(個人の感想です)

この記事内に掲載されていない、おいしいお店はまだまだたくさんありますので、イチ参考としていただき、お好きな「高山ラーメン」食べ歩きを楽しんでください!
more
冬の飛騨高山 お出かけスポット10選!
冬の飛騨高山 お出かけスポット10選!
冬の飛騨高山には、冬季限定の絶景がいっぱい!厳しい寒さと人の温かさが生み出す、情緒あふれる景色をぜひご覧ください。
今回は高山市内7ヶ所と、隣接する飛騨市、下呂市、白川村からそれぞれ1ヶ所ずつ、オススメのお出かけスポットをご紹介します!
飛騨の冬はとても寒く雪深いので、防寒対策を万全にして、冬ならではの飛騨をご堪能ください。
more

オススメのPick Up 記事

雪見温泉とここだけの絶景が待つオフシーズン!冬の奥飛騨ならではの魅力と楽しみ方をご紹介
雪見温泉とここだけの絶景が待つオフシーズン!冬の奥飛騨ならではの魅力と楽しみ方をご紹介
日本屈指の温泉湧出量を誇っている奥飛騨温泉郷。北アルプスの山々に抱かれた秘境にあり、季節ごとに豊かな表情変化がを見せてくれます。中でも冬は一面の銀世界が広がり、他の季節では味わえない特別な体験が待っています。雪見温泉で心身ともに温まりながら、ここだけでしか見られない絶景を堪能してみませんか?今回は、冬の奥飛騨だからこそ味わえる楽しみ方と、その魅力を余すことなくご紹介します。
more
絶景!夜の東光寺「秋の特別拝観ライトアップ」
絶景!夜の東光寺「秋の特別拝観ライトアップ」
「東光寺」は、500年以上の歴史を誇る臨済宗の禅寺です。
境内では「ドウダンツツジ」と苔庭が美しく四季折々の景観を彩り、特に「ドウダンツツジ」が真っ赤に色づく紅葉シーズンは多くの方で賑わいます。

現在、東光寺では「人が行き交うお寺」を目指して、様々なワークショップや企画が開催されています。今回は、昨年から開催されている「秋の特別拝観ライトアップ」の様子を紹介させていただきます。


【東光寺】
◆住所:岐阜県山県市小倉618-41
◆電話番号:0581-36-3005
more
岐阜県の最南端!海津市で水の歴史にふれる旅
岐阜県の最南端!海津市で水の歴史にふれる旅
岐阜県の長良川沿いに車を南へ走らせると、河口に近づくにつれてどんどん川幅が広くなります。その先はもう三重県。お隣は愛知県です。

心地よい風が吹くと川面にさざ波が立って、陽の光がキラキラと反射します。

私たちがこの穏やかな景色を楽しめるのは、先人達のお陰と言っても過言ではありません。
今回は、水との闘いをへて水との調和をめざす岐阜県海津市をご紹介します。

more